notes

20180309


猫のすいちゃんのこと



愛する猫がいる人生は、色にない彩りをもって深くゆたかである。

そして、人生でその猫を失うことはすべての色を失い深い闇をもつ。


2018年2月24日 未明

すい、天に召されました。

ころころと、人懐っこく、じっと瞳をみつめるこ。

おだやかで、誰にもやさしくよりそう、かわいいこでした。

病に気がついてからふた月ほど、つらくとも、いろいろなタイミングと計らいに満ちた最後でした。

そこにはわたしたちだけの、濃く深い時間があったように思います。


ひとが血でつながるように、猫とは根でつながっている。

すいちゃんには、特別にそんな感覚がありました。

友人がふと、わたしに

「すいちゃんは、美和さんの気持ちを、引き受けたんだね 」と。

同じ根から水を吸うように、無意識で水を共有するように、そんな深さをもってつながっていたように感じます。


ただ一緒にいるだけのささやかな日常が、純粋な時間となって、よろこびであり、しあわせでした。

ゆるぎない安心感と慈愛に満ち、わたしのほうが、強く守られ、深くおおきく愛されたように感じます。

そんなかけがえのない大切な存在を失ってしまった。

ふれられないことが哀しく、もう名前を呼べないことが、ほんとうにせつない。

すいちゃんは、わたしの手の感触を、わたしの声を、覚えていてくれるだろうか。


「魂は受け取ろうと決めたときから、自分の魂に重ねることができるのです」

そう聴いたことがあります。

これからは、重ねながら一緒に風景をみつめる日々。ともにいきる日々。

そして、昨日も明日もなく、ただただ今を、懸命に生きる猫のことを、最後まで生きぬいたことを、つらい記憶も胸に刻むように、わたしは絶対に覚えていなければと思うのです。


姿はなくなって、それでも季節はゆっくりと、でもかくじつに、ながれてゆきます。

この哀しみは淡くなったとしても、消えることはないでしょう。

そして出逢えたよろこびが、ふと思い出す一緒にいた風景が、その痛みをつつんで柔らかくしてくれるときが来るのかもしれません。

記憶の色をすこしずつ塗りかえながら、そこにあるものの意味をたぐり寄せながら、そうやって人は物語にささえられ日々を生きていくのかと思います。

猫にはかなわない。そう感じます。


かわいがってくださったみなさま、ありがとうございました。

そして、つらく厳しかった最後の1か月、すいちゃんに、それからわたしにも気持ちをむけてくださって、とても救われました。




すいちゃん、ほんとうに、ありがとう。

どんな時もあなたがいてくれて、とてもしあわせでした。

いまも、これからも、こころから愛しています。


たくさんの気持ちと感謝をこめて。


Agnès 粋 12歳9カ月(2005.5.5ー2018.2.24)

*Agnès「純粋な、汚れのない」という意味を持つギリシャ語源